電動

2023/08/20

今日は夏真っ盛りの日差しの下、一ノ倉沢出合まで。ここには5月に衝立岩ダイレクトカンテの登攀で訪れたばかりですが、今回はクライミングが目的ではなく、純粋に観光です。

天神平へと上がる谷川岳ロープウェイの起点・ベースプラザからこの一ノ倉沢出合までは、普通に歩くと1時間ほどかかりますが、この日はたったの20分。その秘訣はE-バイクです。

ベースプラザにはレンタルE-バイクが4台置かれており、あらかじめネットで予約すると1時間半1,800円というお値段で貸してもらえます。実際に走ってみるまでは「1時間半では短いのでは?」と不安に思ったのですが、漕いでみると出だしの少々きつい登り坂もすいすい登れ、その後はフラットな舗装路を気持ちよく走れてあっという間の到着でした。E-バイクというものに乗ったのはこれが初めてだったのですが、なるほどこれはすごい。ちなみに、この通称「一ノ倉沢道路」は通年車両交通規制が行われていますが、自転車・緊急車輌・管理車輌は規制の対象外だそうなので、自前のE-バイクを持ち込むことも可能であるはずです。今まで一ノ倉沢へのアプローチは重い装備を背負って地道に歩いていたのですが、自転車の使用を積極的に考えてもいいのかもしれません。ただし私は自動車を持っていないのが弱点で、仮にE-バイクを購入しても現地までの運搬手段に困ることになりそうです。

ともあれ、時間にゆとりがあればいろいろと勉強もできるというものです。現地の看板を通じて谷川岳東面の谷の形が氷河の名残りであることを学んだり……。

マチガ沢にはかつて宿があって、清水峠越えの旅人が夕暮れ時にやっとこの辺りに辿り着いて目にした灯火に喜んだ声がマチガ沢の名前の由来だということを知ったり。

実はこの日は午前中から雷注意報が発令されていて、一ノ倉沢の岩壁群を眺めている間にも黒い雲が広がり始めていたのですが、復路は下り坂になるためにさらに楽ちんで、雨が降り出す前にゆとりをもってベースプラザへ帰還することができました。

なお、以前東黒沢を遡行した後に立ち寄ったことがある宝川温泉汪泉閣は、今年が100周年なのだそう。そんなわけで(?)前日は汪泉閣に泊まってみました。

今から100年前=1923年は大正12年で、関東大震災が起きた年にあたります。この年に湯治場が設けられたことが宝川温泉の始まりで、当初は水上からここまでは徒歩で入っていたものの、昭和20年代後半にダム工事のための道路が通じるようになり、昭和30年に現在の本館が作られて体裁が整えられていったのだそうです。その本館というのは、宿泊棟と露天風呂とをつなぐ吊り橋を右岸に渡ったところから振り返り見られる白っぽい立派な建物がそれで、中を通ってみると風格のある木造の建物は確かに昭和レトロを感じさせました。

時間に追われることなくのんびりと露天風呂を満喫し、土地の酒を味わいながらおいしい料理に舌鼓を打って、部屋に戻れば手足を布団の上にのびのびと広げて寝る。登山とは完全に離れた2日間の谷川詣ででしたが、たまにはこういうのも良いものです。もっとも、E-バイクといい温泉宿といい、山登ラーとしては着実に堕落の道を進みつつあるような後ろめたさを覚えなくもないのですが。