慰霊

2023/07/22

4年ぶりの「足立の花火」。これは自分の参加が4年ぶりというだけでなく、開催自体が4年ぶりだということを意味しています。

これまで2017年2018年2019年と3年連続で参加してきた「足立の花火」は東京の夏の花火大会の先頭を切って開催される大型花火大会でしたが、御多分に漏れずコロナ禍のために間が空き、ようやく今年、150万発の花火を用意して再開されることとなったものです。

久しぶりの花火大会とあって、この日の会場である荒川河川敷を目指した観客は70万人に達し、途中の道路は人の群れで大渋滞。我々も危うく開催時刻に遅れるところでしたが、有料観覧席のチケットを持っていたことが功を奏して途中の通行規制をパスさせてもらい、どうにか開幕ぎりぎりに所定の位置につくことができました。しかし、そうした手段を講じていなかったり近隣駅到着が遅かった人たちは身動きがとれなくなって花火鑑賞を諦め、そのまま飲み屋に転進したケースも少なくなかったようです。

公式パンフレットが記すところによれば江戸時代、飢饉により日本中に多大な被害と影響がありました。その犠牲となった人々の慰霊と悪病退散を祈り、1733(享保18)年に隅田川の水神祭で花火をあげたことが、今日の花火大会の始まりとも言われていますとのこと。とも言われていますと若干歯切れが悪いように、Wikipediaで「隅田川花火大会」の項を見るとこの由来話は「創られた『伝承』」であると一刀両断にされているのですが、しかし……。

実はこの日の朝、私は職場で役員仲間だった某氏のお別れ会に参列してきていました。彼は年齢的には私と同学年(まだ63歳)で、お互いに役員の任期を終え職場を卒業した者同士という間柄で昨年11月に食事を共にした際に、新たな仕事に取り組み始めていると語って希望に満ちた様子だったのですが、今年の6月に背中の痛みを感じて診察を受けたところすい臓がんが発覚。そこからたった1カ月で旅立ってしまったのでした。ご家族の悲しみを目の当たりにしながら土気色になった彼の亡骸に別れを告げたのが午前9時。そこから11時間後のこの花火を見上げると、たとえ由来がどうあれ、天空に光の華を開いて散ってゆく花火に慰霊の思いを重ねることがおかしなこととは思われませんでした。