焚火

2023/12/01

早いもので今年もとうとう師走入り。振り返ってみると今年はほとんど泊まり沢に行けませんでした。

「ほとんど」というのは控えめな表現で、実際には泊つきでの沢登りができたのは8月上旬のナメラ沢だけ。このときは思う存分焚火を楽しむことができて良かったのですが、沢登りの最大の楽しみと言っても過言ではない焚火が年間通して1回だけというのは非常に不本意です。来年はこの分を取り返さなくては。

さて、沢の楽しみは焚火だとは言っても、焚火が許される場所とそうではない場所というのはやはりあります。特に国立公園や国定公園は自然保護の観点からしかるべき規制を敷いているわけで、身近なところで言うと丹沢大山国定公園の特別保護地区においては、神奈川県知事の許可を得ない限り焚火は罰則付きの違反行為(根拠は自然公園法)です。

ところがふとしたきっかけから、ある山岳会のブログで丹沢をフィールドとする有料ガイドプランの実施記録を目にしたのですが、その内容は丹沢の玄倉林道をユーシンまで歩いて檜洞(ユーシンから檜洞丸に向かって緩やかに詰め上がる沢の名前)を遡行し、標高1150mあたりで「焚火タープ泊」を行ったというものだったので驚いてしまいました。

丹沢の複雑な地形の中でどこが特別保護地区に該当するかをわかりやすく示す地図というのは意外に見つからないのですが、山中で見られるこの図(クリックすると拡大します)に従うなら、檜洞のユーシン沢出合(標高860m弱)から上流は特別保護地区に該当するようです。そこで当該団体のブログに記載してあった問合せ窓口にメールを送り「ビバークポイントは特別保護地区に該当すると思うが、焚火をすることの許可を得たのか。得ているならその旨を記録上に明記すべきではないか」と確認してみた(←もちろん実際は丁寧な言い回しです)ところ、ただちに次の内容の返事が返ってきました。

  • 認識不足だった(=許可は得ていない)。
  • 掲載ページは削除する。
  • 再発防止に努めたい。

即刻対応いただいたのは良かったのですが、ちょっと待ってほしい。この山岳会は、会を率いるリーダーグループが一流のガイド有資格者で構成されているとブログ上で標榜しています。そうしたプロ集団が、上記のような規制があることを知らないということがあり得るのでしょうか?

しかし、この山岳会の代表の方は(直接の面識はないものの)ご本人の個人ブログを長年拝見していて人格者であることを存じ上げていたので、いただいた返事に偽りはないと信じられます。よってすんだことはすんだこととして、再発を防止していただけるのなら本件は一応は一件落着なのですが、ただ、一時的とは言えネット上に「檜洞上流域でプロガイドが焚火泊を行った」記録が公開されたという事実は残りますから、これを削除前に見ていた登山者が同じことをしようと考えたとしても不思議ではありません。

振り返ってみると自分も、規制がかかっている危険区域(たとえば火山)に踏み込んでいたり、焚火泊の翌朝に(今から思えば)不十分な火の始末でお茶を濁していたりと冷や汗ものの反省材料には事欠かないのですが、そうした点へのブーメランは甘受するつもりであえて、「檜洞」「焚火」で検索する登山者に上記のような行為は不適切であるという情報が伝わることを願いつつこの記事を書いたという次第です。

もちろん本当は、この山岳会が自らそうした発信をしてくれるに越したことはないのですが。

参考