終活

2024/06/19

私が初めて登山を目的として夏のヨーロッパに渡ったのは2003年のこと。そこからツェルマットに3年、グリンデルワルトに3年通ってマッターホルンアイガーに登り、引き続き2014年からシャモニー通いを始めたときに、渡欧の目的がそれまでの「登山」から「クライミング」に変わりました。その後、コロナ禍による中断などをはさみながらもシャモニーに足を運び続けたのですが、通算6回目になる昨年のシャモニー行をもって、この年中行事にピリオドを打つことにしました。この間ずっと登りたいと思っていたグランド・ジョラスとドリュとに登る機会を得られなかったことが心残りではあるのですが、体力的な問題やインカムの問題を考慮し、さらに締めくくりの山としてモンテ・ローザモン・ブランという西欧のツートップに登れたことをもって、自分の心に区切りをつけたというわけです。

さて、そうなると宝の持ち腐れになるのがシャモニーの書店で買い求めたこれらのガイド本です。

Rockfaxの『ChamonixA guide to the best rock climbs and mountain routes arauond Chamonix and Mont Blanc』と『The DolomitesRock Climbs and Via Ferrata』はそれぞれ500ページほどの分厚さがずしりと重いオールカラーのトポ集で、クライミングルートの解説を見ているだけでもわくわくしてきて楽しい上に、現地へのアクセスや滞在に際してのアドバイスまで懇切丁寧に書かれた実用性の高い本です。ドロミテ本は2019年、シャモニー本は2022年の発行ですから今なら情報の鮮度も申し分ありませんが、これを手元に留めておいても使い道がないままに徐々に内容が古くなっていくだけですから、せっかくなら活用してくれる人にすぱっと譲ろうと考えてFacebook上のアルパインクライマーのグループである「ACML」に書籍代は無料でけっこうです。送料だけご負担下さいと引取り手募集の広告を出しました。

すると驚くなかれ、この投稿をしてから3分後(!)にまずシャモニー本に手が上がり、さらに1時間もたたないうちにドロミテ本も行先が決まりました。Facebook上でやりとりをしてからメッセンジャーで送付のための情報交換を行った際に聞いてみたところ、いずれも検討中ながら来年には渡欧予定とのこと。そうした方々に役立ててもらえるなら、無償譲渡した甲斐があるというものです。

長年の登山人生を通じて買いためてきたギアやウェアや書籍の中には、天寿を全うしたので新しいものに買い替えたり同種のギア(たとえばアイススクリュー)を手に入れたので既存のものを廉価で人に譲ったりというケースはありますが、もう使うことはないからという理由で手放したのはおそらくこれが最初です。そういう意味では、これは自分にとって登山・クライミングにおける「終活の始まり」ということになるのかもしれません。

こういうことを書くと「待ってました」とばかりに手ぐすねを引いていそうな(自分より若い)仲間の顔が思い浮かびますが、その期待はまだ早い!私にももう少しの間は現役で登らせて下さい。