千凛

2025/04/08

昨年のアマ・ダブラム登攀の際に私を牽引してくれたチリン・シェルパが1月中旬から日本に出稼ぎで来ていたのですが、いよいよプレモンスーンシーズンの始まりということもあり、約3ヶ月の滞日を終えてネパールに帰国することになったので、同じ登攀時のツアーガイドを務めてくれた優斗さん共々、おなじみ新橋の小料理屋「一由」で純和風にもてなしました。

日中は優斗さんが浅草寺〜隅田川での花見〜東京スカイツリーという鉄板の観光コースを案内し、夜はこのお店で各種日本酒と共に「和」の食を満喫。出稼ぎとは言え日本での生活をエンジョイしていた様子のチリンでしたが(笑)、こういう機会はそうそうなかったのではないかな。社会人になってまだ1年ほどの優斗さんにとっても「小料理屋」というのは新鮮な体験だったようで何よりです。それにごった返すスーツ姿と客引きのお兄さんたちが作る新橋の雰囲気にはアウェイ感も感じていたそうですが、無理もありません。なにしろここは「サラリーマンの聖地」ですから。

食事と会話に夢中だったためにお店の中での記念撮影を忘れていたので、帰り際の新橋駅でセルフィーを撮ってから別れました。チリンは明日の午前中に成田を発つ飛行機でネパールに戻って2日ほどの短いオフの後にAG社のエベレスト・エクスペディションに同行し、これが5月下旬に終わった後、夏になればK2、秋にはマナスルが待っていると言いますからなんとも忙しいものです。ちゃんと奥さん孝行した方がいいんじゃないの?かたや優斗さんの方は、春のエベレストのチャンスは逃したものの、夏にはヨーロッパ、冬にはアコンカグアが控えていると嬉しそうに話してくれました。

渋谷に戻ると、すっかり葉桜になった道玄桜が迎えてくれました。季節は着実に移り変わり、自分も着実に齢を重ねています。共に20代で希望に満ち溢れた二人の前途に幸あれと思う一方で、自分は残された時間をどう使うのか……などと珍しく殊勝に自問しながら、この桜の下をくぐりました。

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