牙利

2013/02/11

夕方、高輪にあるハンガリー料理店「パプリカ ドット フ」に行きました。ちょっと変わった名前のように思えますが、後ろの「ドット フ」は「.hu」、つまりハンガリーの国名ドメインですから、単に「パプリカ」と言っても良さそうです。昨年11月にルーマニア料理店へ連れて行ってくれた友人を、そのお返しとして隣国のレストランへ招待したのですが、聞いてみるとハンガリー料理店は日本に3軒(それも全部東京)しかないのだそうです。

ハンガリーと言うと我々は匈奴系のフン族の名前に由来するのだろうと思いがちですが、確かにハンガリー平原は4世紀後半からフン族の支配を受けたものの、現在のハンガリーを構成するのは9世紀にウラル山脈方面から移住してきたマジャル人で、彼らはコーカソイドです。

そのハンガリーの特産は、何といってもワイン。そんなにたくさんは飲めないだろうと銘柄指定抜きのデカンタで白ワインを注文しましたが、すっきりおいしく料理との相性もグー。そして料理の方は、まずハンガリー料理と言えばこれという赤いグヤッシュスープ、ハンガリー名産だと言うフォアグラとリンゴをソテーしたエザレベルリバマイ、巨大なロールキャベツにサワークリームをかけたトルトットカーポスタ、そしてメインは「食べる国宝」と銘打ったマンガリッツア豚のソテーであるマンガリッツアチガニーペチェニェ。

とても覚える気になれない難しい名前が並びますが、味は意外にもどれもマイルドで、特にロールキャベツは見た目のボリュームとは裏腹にすんなりお腹に収まりました。フォアグラは甘く、豚は上品な味わい。どれも日本人の舌に合う味です。そして、ハンガリー料理に欠かせないのは、店名にも名前が使われているパプリカ。店内に乾燥したパプリカがたくさん吊るされていましたが、日本国内のスーパー等で普通に売られているパプリカではなく、ハンガリー産の香り高いものでないとダメなのだそうです。

この店はハンガリーの家庭料理を現地の味のままに出している点が売りなのですが、一つだけ変えているのは、塩味を控えめにしていることだそう。ハンガリー人は酒も半端ではなく飲む上に、動物性蛋白質や脂肪をふんだんに摂取する食生活で、その上に実は塩気がきついのだそうです。何しろ、テーブルに置かれているハンガリー語リストの中にも「塩が足りない」=ショータラン(!)という言葉が載っているくらいですから。

このレストランのシェフはハンガリー人らしき外国人でしたが、注文をとったり料理を運んでくれたのはえらく話好きな日本人女性で、彼女曰く「ハンガリー人の人生は、太く短く」。確かに毎日こうした料理をたらふく食べていたら「太く短い人生」になることは必定でしょうが、たまの贅沢としていただく分には、とてもおいしい料理でした。ごちそうさまでした。

ルーマニア、ハンガリーと来たら、次はどこにしよう?ブルガリア料理は以前食べたことがあるので、チェコとかスロバキアとかかな。そういえば、「パプリカ ドット フ」のおかみさんが言うには、いくら鯨飲しても酒に酔うことのないハンガリー人が、唯一ポーランド人とだけは酒を一緒に飲みたくないと公言するのだそうです。かなり強靭な酒文化を持っていそうなポーランドの料理にトライするのも、面白そう。