寿司
2013/02/17
日本経済新聞の文化欄で紹介されていた映画『二郎は鮨の夢を見る』が、東急Bunkamuraのすぐ近くの映画館=ユーロスペースで上映中であることを知り、足を運んできました。
1983年生まれの米国人監督デヴィッド・ゲルブが2011年に撮ったこのドキュメンタリー映画は、銀座数寄屋橋にあるミシュラン三つ星鮨屋「すきやばし次郎」の初代店主である小野二郎氏に密着した作品で、二郎氏と現店主である長男・禎一氏、六本木の支店を任された次男・隆士氏、そしてこの撮影のコーディネーターでもある山本益博氏が主要な登場人物ですが、とりわけ二郎氏の職人哲学と、親子であり師弟でもある禎一氏との関係にフォーカスしてさまざまなエピソードが展開します。各登場人物の独白や会話の合間には、市場での仕入れや調理場での仕込みの様子(タコを40分も揉むなど、驚くほどに手間がかかっています)、10席しかないカウンターで客の目の前に置かれる握り鮨の映像などが差挟まれ、魚や鮨ネタそのものが雄弁に何かを語りかけてきているよう。とりわけマグロのセリの様子はド迫力でしたが、それも興味本位のとり上げ方ではなく、鮨屋とつながる魚の仲買人たちのプロフェッショナリズムを紹介するためのものでした。こんな具合に、映画の主題は極めて普遍的なもので、なるほど当初NYで2館のみでの公開だったものが口コミで評判が広がり、ついには250万ドル超の興行収入をあげたというのも頷けました。デジタル機材で手撮りを多用しているせいか、ところどころピントが甘くなるのが気になりましたが、まずはお勧めできる映画です。
なお、映画の中で値段の話題が出た箇所があったのですが、メニューは握りのおまかせコース(約20カン)のみ、価格は3万円から(!)。お酒や会話を楽しむ店というよりは、次々に出される握り鮨を堪能する店なので、早い人は15分で食べ終えてしまうそうです(山本益博氏・談)から、1分2,000円という計算です。食べ物にそれだけのお金をつぎ込むのは、自分としては罪悪感が先に立ってしまってちょっと無理。
正直に言えば、私にとってはこちらのタイプの寿司屋の方が気軽で良いのですが……。目一杯食べて、生ビールも飲んで、それでもせいぜい3,000円。仮にちゃんとした寿司屋に入るなら、こちらで予習をしておくことが必要かな。ところで、ユーロスペースにはこんな映画のチラシも置いてありました。
日本の寿司文化の多様性には、ほとほと感心します。