美酒

大國魂神社 武蔵の國の酒祭り 2025

2025/10/04

たまたま見つけた「武蔵の國の酒祭り 2025」。これは面白そうだとあらかじめチケットをゲットした上で足を運びました。

会場となるのは京王線の府中駅から徒歩わずかの位置にある大國魂神社です。この神社は武蔵国の総社であり、東京大神宮、靖国神社、日枝神社、明治神宮と共に東京五社の一社をなすということですからその格式の高さがわかりますが、ここにこんなに大きな神社があるとは知らなかったので、酒祭りの開始時刻である11時の1時間前に着いて境内を歩いてみることにしました。

駅の南には立派なケヤキ並木(馬場大門欅並木)があり、これが大國魂神社の参道になっています。由緒書きによればなんとこれは、源頼義・義家父子が前九年の役に際してこの神社に戦勝祈願を行い、戦後に参拝して千本の苗木を奉植したものが始まりで、現在のケヤキ並木は江戸に入った徳川家康が二筋の馬場を寄進し、両側に土手を築いてその上にケヤキの苗を植えたのが始まりなのだそうです。

石造りの大鳥居をくぐって境内に入ると、すぐ右の広場が酒祭りの会場になっていて準備中という様子です。

摂社・宮乃咩神社や相撲場、手水舎を左右に見て進み、随神門と中雀門をくぐるとちょうど、結婚式の御一行が神職に導かれて拝殿に入るところ。おめでとうございます。

さて、ここでの自分にとっての重要イベントは「人形ひとがた流し」です。これは人の形をした紙に自分の名前を書き、具合の悪いところに当ててから息を吹き込んで厄を移し、これを水に流すことで自身の厄を取り除くというもの。「山行記録」の方ではたびたび書いているようにこのところ悩まされている左肩から背中にかけての不調をなんとかすべく、大いなる期待をもって人形を流したのですが、水に浮かべた紙はあっという間に溶けてなくなってしまいました。これは……御利益を期待していいものなのだろうか?

気を取り直して、引き続き拝殿と本殿の周りを時計回りに回り末社を拝んで回ることにします。水神社の次にあるのはお酒の神様である松尾神社。今日はおいしいお酒が飲めますように。

本殿に祀られているのは景行天皇の御代にこの地に降臨したと伝わる主祭神・大國魂大神でありましょう。しかし、それにしては千木が内削ぎ(女神)になっているのが不思議です。

境内の左角(東南)には巽神社、右角には御神木の大銀杏。

ぐるっと回ると東照宮があります。祀られているのはもちろん東照大権現(徳川家康)です。

最後に住吉神社・大鷲神社にご挨拶をして一周を終えることができました。それでは酒祭りの会場へ移動することにしよう。

会場となる広場の近くにある神戸稲荷神社にももちろん手を合わせてから、開会を今や遅しと待つ酒飲みたちの行列に並びました。

イベントは定刻通りにスタートしました。主催は東京都酒造組合ですが、広場を囲むように設営されたテントにはたくさんの酒造会社から自慢の酒が出品されており、その数は岩手・福岡・長崎・沖縄以外の43都県から142種類となっています。参加者は入口でチケットのチェックを受けたら出品酒リストと共にお猪口とPETボトルの水をもらい、会場内を自由に歩いて気に入ったお酒を時間の許す限りいくらでも試飲できる仕組みです。

どこから飲み始めてもいいのですが、先日別子銅山に行ってきたこともあり、まずは愛媛県のお酒からスタートしました。そしてあたりを見回すと、おっ、熊本県のテーブルには「ひやおろし」の文字が燦然と輝いているではありませんか。

ラベルが凝っているお酒もあって、なんとも言えずセクシーなラベルは香川県川鶴酒造の「艶鶴」と山形県鯉川酒造の「Beppin 雪女神」です。そしてこれらをいただいてから、会場内でリアルべっぴんな笑顔を振りまいていたMiss SAKE準グランプリの弭間花菜さんに一緒に写真に収まっていただきました。ありがとうございます。

開場してから30分ほどたって参加者がそろそろひと息入れようかなと思うタイミングで、来賓各位による鏡開き。この酒祭りは2013年に始まり、途中コロナ禍による3年間の中断をはさみながら今回が10回目だそうですが、なるほどその蓄積のおかげか運営がこなれていることがタイムテーブルからも窺えます。

開かれた樽酒はただちに参加者に振る舞われ、その後にはイケマー&ホイホイボーイズという地元のグループによる歌もののジャズ演奏(とても楽しい!)もあって、まったく飽きることがありません。

とは言うものの、さすがに飲みすぎました。最後にお酒を買って帰ろうと思ったのですが、このイベントで一つだけ残念なのは東京都以外のお酒の販売がないことです。しかし、考えてみれば遠隔地から重くかさばるお酒をここまで安全に運ぶことは大変でしょうから、気に入ったお酒はラベルを写真に撮って後でネット注文してくださいということなのでしょう。そのかわり東京都のお酒に限っては会場で販売されていたので、試飲した上で八王子酒造の「prototype 1」という妖しいネーミングのお酒を買い求めました。これは何か格別のイベントがあったときに開けることにして、それまでは自宅の冷蔵庫の中で眠っていてもらうつもりです。

このようにして2時間弱で会場を後にしましたが、実に楽しいイベントでした。各県の作り手の方々と短時間ながら言葉を交わすこともできて、文化としての日本酒をこれからも大切にしていかなければという気持ちにさせられましたし、東京都に限ってもおなじみの小澤酒造だけでなく各地に酒蔵があることを知って、楽しみが増えました。会場で配られたパンフレットによれば、立川にある「東京地酒ショップ」ではこれらの蔵元のお酒が一堂に揃い試飲もできるということですから、まずはそこからかな。

  • Hatena::Bookmark