成約

ガッシャブルム 2 EVOメルカリでお買い上げ

2025/12/07

今年2月の記事で山道具のいくつかをメルカリに出したという話をしましたが、その最後の大物である高所用ダブルブーツ「スポルティバ ガッシャブルム 2 EVO」(以下「G2」)がついに売れました。

この出品に付していた「商品の説明」は次の通りです。

標高6000mから7000mに対応する高所用登山靴です。詳細なスペックは、スポルティバのサイトでご確認ください。

2024年に購入し、同年10月にヒマラヤのアマ・ダブラム(6812m)登山で使用しました。その際に部分的に修理を要する破損(注)があり、帰国後にメーカーに出してリペア済みですが、使用に伴う一定のスレや汚れは残っています。購入時の箱に入れてお届けします。

サイズはEU43です。私は通常の冬季登山では同じスポルティバのNEPAL CUBE EU42を使用していますが、高所では足のむくみなどもあるため、ワンサイズ上を選ぶのがよいようです。しかし、できればあらかじめ登山用品店で試し履きをすることをおすすめします(そのかわり何か買ってあげてください)。率直に言って脱ぎ履きは容易ではありませんが、保温性は十分でした。

なお、インソールは一応おつけしますが、自分の足に合うものを別途買い求められる方がよいと思います。

注:このシューズはBOAシステムのダイヤルがゲイターの外に露出していますが、ここが岩稜登攀の際に岩に当たって傷んだため、左右ともダイヤルを交換してもらいました。また、ゲイターの前面が摩擦で傷んだため、リペアにより当該部分に黒いつぎ当て(左右とも同形状)をした状態になっています。これにより対摩耗性が向上したと考えることもできますが、こうした点が気になる方は購入をお控えください。

上記のとおり、このシューズは昨年10月のアマ・ダブラム登山のために購入したもので、購入価格は定価通りの162,800円。よく働いてくれましたが、今後高所登山を行うつもりはないため売りに出したものです。使用時に破損が生じたBOAシステムをリペアしていることもあり、メルカリでの販売価格は定価の半額を少し下回る程度に設定したのですが、半年ほどは問合せは入るものの購入申込みには至りませんでした。

ところが、まあ気長に良縁を待とうと鷹揚に構えていた10月初旬のある日、ようやく購入の申込みが入りました。購入者(Aさん)とコメントのやりとりをすると、アコンカグア(6961m)登山に使用する予定であるとのこと。アンデス山脈の南緯32度にあるこの南米最高峰の登山適期は年末年始頃となるので、このタイミングで申込みをいただいたのは頷けます。早速G2をAさんに送ったのですが、実はこの取引に関しては一つ問題がありました。それは商品が登山において最重要アイテムである登山靴であり、登山靴にはメーカーやモデルごとの形状の違いに加えて個体差すらあるのが常なので、表示されているサイズが合っていても実際に履いてみないと本当に足に合っているかどうかわからないという点です。しかもアコンカグアのような高峰では、登山靴のフィット具合が登山の成否を左右し、ひいては生命に関わるおそれすらありますから、通常の取引のように送付→受取=取引完了とするわけにはいきません。ここは同じ登山者同士、良心的な取引を心掛けるべき場面です。

そこで私の方からAさんに「受け取ったらどこかの山で試し履きをして、それで問題がないことを確認してから成約処理をしてほしい」と申し入れたところ、Aさんは手元に届いたG2をまず屋内で履いてみてサイズが問題ないことを確認した上で、その週末に富士山で試登をしてくれました。ところが案の定、家ではサイズが合っていると思われたこの登山靴も山で履いてみると2時間ほどで片足に靴擦れができてしまったとのこと。これにはAさんも原因がわからず困惑していましたが、現に不具合が生じている以上、このG2をアコンカグアに持って行くわけにはいきません。ソックス、インソールなどでの工夫の余地はあったかもしれませんが、私のネパール旅行が迫っていることもあり、メルカリ上で相談の上、売り手・買い手の合意による返品という処理を行いました。

その後数日してAさんから返送されてきた登山靴の箱の中には、おまけとしてAさんがかつて訪れたことがあるというブータンの紙幣と美しい絵葉書が入っていました。これを見て、成約には至らなかったものの、よい方と取引できたことを喜ばしく思いました。

私の旅は10月31日出国・11月22日帰国で、この間はメルカリへの出品を一時的に取り下げ、帰国後数日してから出品を再開すると、間髪入れずに新たな購入申込みが入りました。一体どうしたことだ?と驚いたのですが、この方(Bさん)もやはり年末にアコンカグアに登る予定で、自前のシングルブーツで臨むつもりでいたもののそれでは要件を満たさない(Bさんの言によればレンジャーステーションの荷物チェックでNG)ことが判明したため、急遽アコンカグアの標高に対応するダブルブーツを探し、私が出品を再開したばかりのG2に辿り着いたということでした。これはBさんにとっても私にとってもラッキーだったと言うほかありません。

ここから先はAさんのときと同じです。G2をしっかり梱包してBさんに送付し、週末に雪山で試し履きをしてもらったところ、今回は次のようなうれしい連絡をいただいての取引成立となりました。

いやー、よかった!もちろん、自分では使う予定のなかった登山靴がウン万円に変わったことも素直にうれしいのですが、それ以上に、アマ・ダブラムで私を助けてくれたG2が今度は他の方のアコンカグア登山をサポートするという新たな使命を得られたことの方が何倍もうれしいことです。

G2も、Bさんも、そしてAさんも、地球の裏側の南米の地で見事その最高地点に立てることを、心から祈っています。