補習

#1260 - 川本喜八郎人形ギャラリーを訪れる芸能

2026/07/05

5月に飯田市を訪れて川本喜八郎人形美術館を見学したことは先に紹介したとおりですが、自分にとっての地元である渋谷にも、川本喜八郎の人形芸術を堪能できる場所があります。それが、渋谷ヒカリエの8階にある「川本喜八郎人形ギャラリー」です。本来なら先にこちらで「予習」してから飯田市へ赴いたほうがよかったのかもしれませんが、順番が逆になったので「補習」ということにしてヒカリエに向いました。

ここでは『三国志』と『平家物語』にまつわる人形を展示しており、この日はおよそ50体弱の人形たちが展示されていましたが、テーマを設定しての展示替えが年に2回ほど行われているのだそうです。

こちらは『三国志』のコーナーで、左半分は「関羽の千里行」をテーマとして赤兎馬にまたがった関羽を中心に置き、右側は「荊州の群雄たち」がテーマで中心人物は劉表ということになります。もちろんこれらも見応えがありますが、『三国志』の人形たちは飯田市の方でたっぷり見ているので、今日はもう一つの展示の柱である『平家物語』の方を、各キャラクターが登場する謡曲との組合せで見ていくことにします。

こちらが『平家物語』のコーナーで、左は「くりからの巻」「京乃木曽殿の巻」、右は「一門都落ちの巻」です。

まずこちらの前列左端は斎藤実盛で、三修羅の一つ「実盛」の主人公。また後列の左から4人目は今井兼平で、こちらも「兼平」のシテですが、恥ずかしながらいずれも未見(仕舞では観ています)。

次に馬上の女性はもちろん巴御前で、その名もずばり「」を2回観ています。かたや右は木曽義仲で、上演機会が少ない「木曽」にツレとして登場するそうですが、これも未見です。

隅に立つ法体は後白河法皇。やはりシテではなくツレですが「大原御幸」の主要登場人物です。

前列は平維盛で、廃曲となっていたものを観世流の大槻文蔵師が復曲した単式夢幻能「維盛」があるそうなので観てみたいものです。さらに維盛の後ろは平経正で、曲はもちろん琵琶がモチーフとなる「経正(経政)」です。

右端後列には平忠度と藤原俊成が並び、能は「忠度」「俊成忠度」があります。このように整理してみると、巴御前を例外として木曽殿主従にまつわる能をほとんど観ていないことが判明し、今後の観能方針が見えてきたような気がします。

展示室の中央には川本喜八郎の遺作となった『死者の書』の郎女の人形も置かれていました。この郎女は當麻寺の中将姫伝説を下敷きにした人物ですが、中将姫伝説にまつわる能には「当麻」があります。


せっかくなので、飯田市の川本喜八郎人形美術館で見た人形もいくつか取り上げてみます。

白拍子姿と出家姿の二態を示していたのは祇王、これを横から見守る若い尼は仏御前。曲は宝生流・金剛流にある「祇王」(今年3月に国立能楽堂で上演されましたが見逃しました)と、観世流・金剛流にある「仏原」になります。

海原を前にして遠ざかる船に手を差し伸べているのはもちろん俊寛で、能「俊寛」は観世流と金春流とで観ていますが、この姿はむしろ歌舞伎の「俊寛」を想起させます。そして最後に「西行桜」のワキである西行(その右は文覚)を紹介したところで、この補習はおしまいです。