火星

2009/07/26

この週末は絶好の沢日和で、私もあらかじめ奥多摩の沢登りの計画を入れていたのですが、5日前に同行予定者から「都合が悪くなった」との連絡。うーん、このタイミングでの中止は正直きつい!岩ニモ行ケズ沢ニモ行ケズの宮沢賢治状態で悶々としていたところ、別方面から「映画の試写会の招待券が当たったので一緒にどう?どうせヒマだろうから」という誘いが入りました。捨てる神あれば拾う神ありとはこのこと……となぜか津田沼まで行って観てきたのが、8月21日公開予定のこちらの映画。

人類の夢、それは宇宙。「1960年代の終わりまでに人類を月面に到達させる」というケネディ大統領の宣言のもと、NASAはマーキュリー、ジェミニ、そしてアポロ計画を立案し、着々と成果を挙げていった。途中、事故により宇宙飛行士3名の生命を失うという犠牲を払いながらも、1969年7月、NASAはついにアポロ11号の月着陸船を月面に着陸させる。初めて月に降り立ったニール・アームストロング船長がそこに見たものは……奈良時代の修験者の錫杖と剣だった。

……というのは、もちろん嘘です。

NASAは、その設立当初から全てのプロジェクトをフィルムに残してきていたのだそうで、この映画はその膨大なフィルムをもとに、宇宙探査計画の最初期から現在までを手際のよい編集で一気に見せてくれます。パイオニア、ボイジャーなどの外惑星探査計画に関しても魅力的な映像は記録されていたでしょうが、そこを切り捨ててあえて有人計画に絞り込んだ潔さがもたらす滑らかなストーリー運びは、同じく奈良時代の錫杖が出てくる別の映画とは大違い(だから嘘だと言うのに)。

この映画のクライマックスは、やはりアポロ11号による月面着陸でしょう。ケネディ大統領の宣言からたった8年の間にこのミッションを実現するために、NASAは極めて緻密かつ慎重なプランニングのもとにランデブー、ドッキング、船外活動、月までの往復などのステップを着実に踏み、ロケットの大型化を実現し、技術・運用両面でのノウハウを蓄積していきます。そして1969年7月21日、ついにあのThat's one small step for man, one giant leap for mankind.となるわけです。しかし、地上ではベトナム戦争が泥沼化してきており(cf. ある兵士の言葉)、膨大な予算を費やすアポロ計画は1972年の17号で打ち切りとされてしまいます。

後半ではスペースシャトル計画の推移を説明していますが、その過程で発生した1986年のチャレンジャー、2003年のコロンビアの事故発生の瞬間のNASA管制室の様子も生々しく紹介されており、アメリカンドリーム一色ではありません。にもかかわらず映画は、これからも宇宙探査は人類の真実探求の営みとして続けられていくだろうとポジティブなメッセージを残し、ディスカバリーの荘厳な打上げシーンをもって締めくくられています。 『宇宙へ。』は、どこまでもリアルで、どこまでも美しい映像が、一貫したストーリーに沿って展開する骨太のノンフィクション映画。これは、おススメです。

実は、この試写会は千葉工業大学に4月に新設された惑星探査研究センターとのタイアップ(?)で、同大学の津田沼キャンパス内で行われたもの。映画の前には惑星探査研究センターの松井所長他の皆さんによるトークセッションもあり、さらに下の写真の赤い不思議な球体がお土産につくサービスぶり。これ、なんだかわかりますか?センター開設記念「火星儀」です。

赤いところが標高が高い地域で、写真では南半球が上側に来ています。惑星探査研究センターでは、火星にロボットを送り込んで生命を発見するもくろみを持っているのだとか。松井所長はトークセッションの最後に「願わなければ、実現はしない」ということを強調していました。確かに。なお、写真の左半分に写っているポリネシア料理は、本題とはまったく関係ありません。念のため。